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男神坐像(薬師如来、又は日光菩薩・月光菩薩)

クメール バイヨン様式 12世紀末~13世紀初
材質:青銅鍍金 高:14.5cm

水瓶(薬瓶)を合掌し捧げ持つ
額に第3眼を持つ男神坐像ですが、
この像容の作品は、僅か数例しか知られていません。

クメールの青銅像では、どのような神(仏・菩薩)であったのか確認
できないものが数例あり、この作品も尊格の定説はありません。

おそらく、水瓶は薬瓶であると思われ、バイヨン期に信仰された薬師
如来(バイシャジャグル)の一つの像容、又は薬師如来の脇仏であ
ったと考えられます。

「アンコール・ワットの時代」連合出版2008年の著者ブリュノ・ダジャン
ス教授は、著書の中で、釈迦如来と薬師如来は、どちらも像容はナ
ーガ上の仏陀で区別が付かない。また、施療院碑文によるとナーガ
上の仏陀
は薬師如来であるとしています。

しかし、ナーガ上の仏陀には、定印(両手の手のひらを上にして腹前
(膝上)で上下に重ね合わせる)の手の上に
小さな丸い容器を乗せ
るものと、何も乗せないものとの2種があり、その容器が薬瓶であり
乗せるものを薬師如来、何も乗せないものを釈迦如来とする説もあり
ます。


又、『Khmer Bronzes』2011 Emma C Bunker and Doguglas Latchford
では、
この水瓶を持つ坐像は薬師三尊像の太陽と月を実体化した
脇仏、日光菩薩(日光遍照)・月光菩薩(月光遍照)との指摘もあり
ます。


遺された作品の数から考えると、薬師如来の像容の主流はナー
ガ上の仏陀で
僅かにこのタイプの日光菩薩と月光菩薩を脇仏と
した薬師三尊像が像造されたのだと思われます。

遺された鍍金作品に稀に見られる赤味を帯びた鍍金で、全体に鍍金
も良く残り、強い精神性を感じさせる、極めて優れた青銅作品です。

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