kb158
BACK

ヴァジュラ(金剛杵)  Sold
クメール アンコール期 11世紀~13世紀
材質 青銅 長:14.5cm (展示台含 高:9㎝)

ヴァジュラの由来は、紀元前1200年~前1000年頃に編纂された古代インドの
バラモン教の聖典「リグ・ベーダ」において、神々が獰猛な悪魔の首領ヴリト
ラを殺すため、偉大な聖仙ダディーチャ(ダディヤッチ)の骨から工芸神トゥヴ
ァシュトリが一心不乱に仕事に励み、こよなく(比類なく)恐ろしい形をした最
強の武器であるヴァジュラを造り上げたと述べられています。

ヴァジュラはインドラ神を始めとする諸神の神聖な武器で、如何なるものより
も固く、金剛石(ダイヤモンド)のように堅固であるとされます。

古代インドの武器であるヴァジュラは、密教において心中の煩悩を打ち砕く
菩提心の象徴として儀礼に採り入れられ密教法具・金剛杵とされます。

クメールのヴァジュラは、殆んどが中央の杵形の把手の両端に5本の鈷(刃・
きっさき)をもつ五鈷杵で、中鈷を中心に四方に脇鈷が外に広がるかたちで、
脇鈷基部には獣頭を表しています。

本作品は、クメールのヴァジュラの中でも、非常にバランスの取れた厳しさの
ある秀作で、鋭い刃の脇鈷と獣頭は精緻で緊張感と気魂を感じさせ、状態は
完好で補修は無く、アンコール王朝期のなかでも特に優れたヴァジュラです。

遺されたクメールのヴァジュラは、総てが出土の為、形状からも殆どが鈷の
欠損などがあり、作品のクオリティーが高く完全なものは非常に稀です。